新しい制度が導入されれば、それが定着するには十年はかかるだろうと思っています。それにしても、平成四年四月、全教協が厚生省に要望書を提出したという段階にあったことを考えると、東北・北海道地区の現況ははるかに全国の動きの後塵を拝しているように感じていました。十日の会議に出て、全国の情報を聞きました。すでに います。導入しているところは別として、検討中と答えている施設は、当地区とあまり変わりはない状況だと思いました。弓掛課長は公教育導入の問題は一合目に達したと言われました。正に一合目です。教護院における教育を定めた法令は、児童福祉法第四八条です。「児童福祉法の解説」の九一年九月一五日の改訂版によると、この四八条の解説は次のようになって 「現在いくつかの教護院では施設内に学校教育法に基づく学校の分校又は分教室が設けられ、学校教育が行われているが、これらの対応は本条の趣旨に反するものではない。けだし本条は学校教育が整備されず教育が行われない場合に教護院長により教育を行うべきことを定めたものと解されるからである。」本来、この四八条は教護院の教育について、もっと積極的な意味づけを行なったものと私たちは解していました。かく解し、かく信じ、懸命な努力を傾けて、教護児のために、独自の教育を行なってきました。明らかに解釈が変えられたのは、法の解釈によって公教育を導入しようとする意図だろうと思うのですが、それは無理ではないかと感じています。「学校教育が整備されず教育が行われない」、文脈上、いわば好ましからざるものと考えられる状態が長く放置されたままになっていたという、法の体系としては、極めて不自然不整合な結果になりかねないと思うからです。公教育導入はたしかに一合目に達したばかりです。これ以上進むには、法改正しかないと私は思います。都道府県を動かすにも、それしか説得の法はないように思っています。1194第2部 教育 第13章 少年司法福祉
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