をどこに置くかという点では色々な意見がありました。当初は二〇世紀の最後の年である平成一二(二〇〇〇)年が有力でしたが、最終的に平成一五(二〇〇三)年を記述の終期としました。これは、堀達也知事が退任し、高橋はるみ知事が就任した年です。現代史は同時代史としての一面があることから、次のような課題が残されています。その渦中に生きる私たちが、現代史の様々な事象を客観的に認識して、その歴史的価値を正しく評価できるのだろうかという点です。また、現代史に関係する資料は無数に存在していますが、その中から後世に残すべきものを選択し、保存することが、果たしてどの程度まで可能かといった点もあります。最初の課題に関連して、かつては「歴史の研究の範囲を五十年前までとする」(黒板勝美『更定 説』岩波書店、昭和六(一九三一)年)という有力な見解がありました。著者は東京帝国大学の国史学の教授でしたが、同氏が指摘されるように、同時代の様々な事象を研究対象とするには、最低でも五〇年程度の物理的時間の経過が必要であるとすれば、現在の日本史研究の世界では、現代史研究の存在そのものが改めて問われることになるでしょう。最後に、本書について、その特徴を簡単に述べておきます。① 目次の構成を2部編成としたこと本書では、社会・教育・文化という三つの分野を取り扱っており、それに従えば、三部構成になるはずです。しかし、それぞれの分野の資料をどのような構成で掲載するか、編集関係者を中心に検討を重ねた結果、第一部を「社会・文化」、第二部を「教育」とし、第一部、第二部共にそれぞれ一三章の構成としました。また、これらの分野の中では、社会や教育と比較して、文化という枠組みの分野を支える学問的基礎が明確でなく、3国史の研究 はしがき 総
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