釧路市は昨年七月十四日二回に亙り艦載機の空襲をうけ、市の中心部たる駅前通りの両側を一挙に失つてしまつた。内地諸都市が主にB二九に依る被害であるのに対し、本市は敏捷な活動力を有する艦載機の攻撃をうけたゞけに、消火に苦労だつた模様である。幸に駅の東南部に高地があり、之に横穴式の防空壕を掘つておいたのが大変役に立つた様である。戦災の状況は罹災面積七六、〇〇〇坪、戦前戸数一〇、二六六戸の内その一一%に当る一、二〇四戸焼失し、罹災人員八、〇〇〇人である。戦時中本市の港は東北海道に於て、木材、石炭、水産物、雑穀等の集積地並に輸出港として年間約一五〇万噸の荷役をなし、八千噸級の船舶が埠頭に横付けになつて相当活潑だつたらしい。終戦に依り之等の活動は一時停止したが、昨今内地向けの航路が再開され、石炭等を京浜及び裏日本方面へ輸出し始めた。今後の釧路市が如何なる性格を有つ都市として復興するかは、単に釧路市自体の環境より決定されるものでなく、国土計画に於ける北海道の占める役割と、東北海道に於ける石炭、木材、水産物の加工等の輸出に対する釧路市の重要性とより決定されるものであらう。唯単に戦前の都市を再現するのではなく、明確なる目標を有つ都市として復興する為にも、国土計画、地方計画の樹立せられるのが望ましい。市としても将来に付いて、はつきりした見通しをもつている訳ではないが、道庁、市の技術陣の抱いている構想は大体次の如くである。現在の復興状況は諸種の困難なる事情あり、左記の如く余り良好ではない。住 宅 併用住宅 其 他 建築状況の良好でない原因としては次の如きものがある。イ、食糧労務等の不充分なる事。之はこの地方が霧の多い湿潤地帯であり、又寒気厳しく農耕に適しない土地〈中略〉計画 進捗 二九七戸 六〇戸 一〇 四 九 四 進捗率 未着手二〇% 二三七戸四〇 四四 五六 第1部 社会・文化 第3章 都市化と都市の生活176
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