北海道現代史 資料編3(社会・文化・教育)
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8 知里真志保による『分類アイヌ語辞典 植物篇』の「序言」第1巻 序  言アイヌ語の植物名を専門に取扱った文献わ、従来決してその数に乏しくなかった。『蝦夷草木圖』『蝦夷草木誌料』等古いものわしばらく措くとして、明治以後になってからでも、北海道アイヌ語植物名に関してわ、宮部金吾・神保小虎両氏の専門的調査『北海道アイヌ語植物名詳表』があり、それに基いて広汎に植物名を採録したジョン・バチラー氏の『アイヌ・英・和辭典』があり、更科源藏氏の『コタン生物記』(樹木篇・雑草篇)がある。樺太に於ても、宮部金吾・三宅勉両氏の『樺太植物誌』、菅原繁藏氏の『樺太植物圖誌』及び『樺太の植物』等が知里眞志保『分類アイヌ語辞典 篇』一九五三年(北海道立図書館所蔵)第1巻 植物あって、何れもアイヌ語植物名を丹念に調査記載している。動物名の専門的調査の記録に、バチラーの辞書及び前記の『コタン生物記』以外、殆ど見るべきものの無い現状に比すれば、植物名の調査に於てわ、我々わ寧ろ恵まれた状態にあるのである。しかも私が再びこの分野を掘り返して本書を編み、一見屋上更に屋を架するような挙に出たのわ、私自身がもともと植物がすきで、従来の文献とわ比較にならないほど多くの語彙を集めているからという理由の他に、従来の文献わいずれも多くの致命的な欠陥を含み、それをそのまま放置することわアイヌ研究の正しい発展を阻害すると考えたからに他ならない。(北海道立図書館所蔵)第1部 社会・文化 第4章 戦後社会の中のアイヌ民族の生活と文化238

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