共に家畜及び魚類の霊を始め針、筆、桝に至るまで供養の祭りを行われ又各地には開拓者を犒うための胸像、或は顕彰碑等の多くが見られ、誠にうるわしい事であります。斯うした事につけても痛切に感じられますことは、先住民アイヌの先祖に対する餞として、将た又向後の考古資料にも役立たせようというところから、白人古潭のウタリが中心となり、北海道アイヌ〔文化〕保存協会を組織し、古俗品を蒐集して一堂に収め永久に保存する事と、ヌサを設けて先祖が行つたカムイノミの祭り事も今のウタリが生存している間だけでも実行することが同族の義務であるとして、白人古潭にある勅使御差遣記念碑の附近に於てアイヌ文化考古館(仮称)約三〇坪総予算二〇〇万円位を建設する企画を樹て之が資金造成のため「アイヌ文化史」なる冊子を発刊し、其の売上金をもつて資金に充てようと昨年春以来此の事について関係者は渾身の努力を続けておりますが、仲々容易ではありません。就きましては茲に江湖諸賢に謹しんで御願い申し上げます。それは北海道先住民アイヌ人の霊を供養する意味において、将た又考古資料保存のためにも此の企画に対し何卒御賛同下され、アイヌ文化考古館の実現成りますよう御協力賜り度く切に御願い申し上げます。尚、本年は皇太子殿下御成婚の御目出度い年であり、此の盛儀を奉祝する意味を含み、また白人古潭矯風会創立満三十年に当る年でもありますので、之が記念事業として本年是非建設致し度く同族は念願しているのであります。重ねて申し上げます。それはアイヌという、宿命的な 血に悩み且つ赤貧に生ける骸を時世に晒すものゝ多い中にも雄々しく立ち上つた本会ウタリの此の真剣な企画に、此の悲願に、深く御理解下され格別なる御温情の許、御賛助賜り度く茲に帯広市及び十勝管内の同志一同伏して懇願申し上げます。昭和三十四年三月吉日北海道アイヌ文化保存協会(本部十勝国幕別町字千住)第1部 社会・文化 第4章 戦後社会の中のアイヌ民族の生活と文化248
元のページ ../index.html#264