アイヌ文化伝承保存会の設立趣意書各 「アイヌ文化伝承保存会」設立の趣意書文化の発展に伴い、人間はますますその生活領城を拡大しつつあり、民族相互理解の必要性が一層高まっています。北海道は、日本列島の北端に位置し、北方圏諸地域と 位 は、古くからその風土に根づいた多くの北方諸民族の文共通する北方的気候風土を有し、わが国における北方圏交流の要としての役割をもつていますが、この北方圏にアイヌ文化伝承保存会「「アイヌ文化伝承保存会」設立の趣意書」一九七四年提案者 (北海道立図書館所蔵)化があり、世界的に注目されているアイヌ文化もその一山本 多助 つです。豊岡 喜一 北海道はそのアイヌ文化の中心であることは、周知の成田 得平 事実であり、この文化を生みだしたアイヌ民族は、古来敬神の念があつく、礼儀を重んずる民族として知られ、しかも、豊かな詩情をもつて、オイナ(古謡)、ユーカラ(神謡)のようなすぐれた文学や芸術を創造伝承してきました。そして、このアイヌの伝統文化は、北方の採集狩猟文化とかかわり深く、一方水稲文化以前の日本列島西南部の文化にもこれと一脈あい通ずるもののあったことが、考古学的に次第に明らかにされつつあり、その保存と研究は、北方圏諸文化を理解するうえにも必要なことであると思われます。従来、アイヌ文化の記録、保存、調査研究は一部行政機関によるものもありますが、多くは明治以来、研究者の個人的努力によるものが多かつたようです。しかしながら、最近の社会状勢をみると、アイヌ文化18 第1部 社会・文化 第4章 戦後社会の中のアイヌ民族の生活と文化260
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