の個人的研究の遂行は不可能となってきており特に、文化表現の根幹である言語は、日、一日と人間の記億から、失われようとしています。最近、アイヌ文化に対する国民の関心や、国際的関心がにわかに高まりつつありますが、これに応え得る施設は、有形文化に関するものは別として、無形文化に関するものについては、国内においては皆無に等しい現状にあります。従って、アイヌ文化保存緊急対策の一環として、アイヌ語をはじめ、無形文化の保存研究・公開のため、国立又は道立でアイヌ文化研究の中心となる施設を設立すべきであるとの意見も、強く出されているようです。こうしたなかで、以前から先祖の遺志を受け継ぐための組織の必要性を痛感していた人々が、此度、アイヌ文化伝承保存会の設立を広く呼びかけました。その事業は、㈠ ユーカラ、サコロペ等のアイヌ伝承文学の視聴覚記録㈡ ㈢ ㈣ ㈤ ㈥ 等であります。幸い、北海道ウタリ協会、旭川アイヌ協議会等多くの人達の賛同を得ました。一足跳びに財団法人を結成するのは諸般の事情で無理と思われますが、今般事務局を札幌市中央区大通西六丁目に置き会の設立を期したものです。各位におかれましては設立の趣旨をお扱み取り下され、厚く御協力をお願いするものです。昭和四十九年七月十九日アイヌ語の記録、伝承アイヌの風俗習慣に関する地域別視聴覚記録アイヌ史に関する総合的研究機関誌の刊行その他目的を達成するための必要な事業アイヌ文化伝承保存会 会長 小川佐助 (北海道博物館所蔵)第3節 伝統文化の「保存」から「学習」「継承」へ261
元のページ ../index.html#277