北海道現代史 資料編3(社会・文化・教育)
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白老民族文化伝承保存財団「アイヌ民族資料館建設・着工にあたって」アイヌ民族資料館建設・着工にあたって 「アイヌ民族資料館」の建設工事が本年七月二八日をもってスタートした。ようやく工事に着手できたというものの、ここまでの道のりは決して平坦なものではなかった。そもそも、この資料館の建設計画が立案されたのは、当財団が公益法人として認可を受けた昭和五一年秋のことである。周知のように、アイヌ民族文化がわが国における北方文化学習の生きた教材として、教育・文化・芸術などをはじめとする多くの分野から再認識され、そのすぐれた伝統を積極的に学ぼうという姿勢が生まれたのは大体、昭和四〇年代後半のことといってもよいであろう。この白老民族文化伝承保存財団『白老ポロトコタン白老民俗資料館報』№六 一九八三年一一月頃を契機として、アイヌ文化を正しく公開し、その情報を一般に提供し、普及していくというニーズが博物館をはじめとする道内の社会教育機関に求められてきた。それまでは、どちらかといえば、アイヌ文化が一部の研究者のみの対象となって一般の人々には無縁のものとされ、その実態が正確に伝わる機会がなかったり、あるいは、アイヌ文化に触れることがあったとしてもそれは道内のいくつかの観光地で紹介される、多少色彩化・演出化された形のものでしかなかった。そのため、すばらしい伝統文化が継承されていながらも、多くの人々にはその本質が伝わらず、逆に偏見や誤解にもとずくアイヌ観が認識されていくことも決して少なくはなかった。つまり、ここにきて、若干遅すぎたきらいがあるにせよ、教育的機能を具備し、公共の利益に資するような性格を備えたアイヌ文化施設の整備から広く求められるようになったのである。昭和五一年に当財団が公益法人として発足したのも、あるいはまた、それと時期を同じくして新資料館建設計 ••    拡充が官民サイド19 262第1部 社会・文化 第4章 戦後社会の中のアイヌ民族の生活と文化

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