約束違反だと直接交渉すべく申し入れましたが、未だ会うことができません。道教育長に会って事情をおききしました所、「アイヌ語教室の開設については文化庁にあげて国費の予算がつくようになってはいるが、細かいことは分かっていないので今しばらく待ってほしい」とのことでした。アイヌ語教室の事業主体は、北海道ウタリ協会で、下部組織の平取支部が依託をうけて実施するので、支部事業としては大きい部門を占めています。町教委や町でもこの事業に対しての理解と協力をしていただきたいと、支部長を中心にアイヌ語教室運営委員や、平取アイヌ文化保存会などで陳情をしてきました。でき得れば六月議会にでも補正予算として提案されることに期待をかけています。私達は大幅の予算づけを期待して、アイヌ語教室に専 念できる有能な青年をと、東京から萱野志朗君を呼び、新年度から業務に専念させていますが、前記のように予算づけが足りず、十分な報酬も払えず申し訳ないと思っています。二風谷には萱野茂さんという立派な講師が住んでいます。毎月忙しい時間をさいて講義してくれています。ラジオ放送やカセットテープで全国の人々がアイヌ語を学んでいます。萱野先生に直接教えを受けられることは地元の者として幸福なことだと思っておりますが、「灯台元暗し」のたとえの通り地域にはそれを知らない人々が多いのが残念です。今までの経過をふり返って見ますと、アイヌではないシサムの受講者の方が休まず熱心に来ていることと、六〇歳以上の老人が子供の頃聞いたアイヌ語をなつかしみながら熱心に勉強していることです。二風谷の将来は農業の落ちこみに変り観光産業でなければと、町民の声と町の施策の方向づけがなされています。観光に関連する人々の熱意の足りなさが残念です。平取町の観光は山や川と自然の美しさとともにアイヌ文化のふるさとを売りものにしなければと思います。皆で頑張りましょう。第3節 伝統文化の「保存」から「学習」「継承」へ267
元のページ ../index.html#283