り、全道に保健所、防疫出張所を設け細菌学的早期診断や、衛生係員の配置、蔓延防止のための隔離病舎の新設を要するとしているが、資材及び財源難であるとも記している。伝染病の媒介となるねずみ及昆虫の駆除について、GHQの指導でDDT等の薬品散布による強力施策を考究中であり、花柳病に関してはGHQの覚書で廃止となった庁立治療院に代わる診療所を建設するための特段の配慮を要望している。猛威を振るった発疹チフスの予防消毒、ねずみ等駆除、予防接種についてはGHQ公共衛生福祉部よりの連絡や指示のもとに取り組まれていた様子がよく分かる。エキノコックス症(資料ではエヒノコックス、包虫症のこと)は、日本では北海道を中心とする北日本で広く確認されているが、一九六四年までは道北の礼文島にのみ発生し、その宿主であるねずみの駆除が自治体では熱心に行われた。資料3は、船泊村(現在の礼文町)で一九五五年の一斉駆除の取組の一環として、礼文島の小中学校生徒によるねずみ駆除の標語と作文の入選作品発表会の際に演奏されたねずみ捕りの数え歌である。一村こぞって、ねずみ捕りでエキノコックスのない郷土づくりをしようとうたっている。医療者の適正配置に関しては、第二期の拓殖計画終了に伴い一九二九(昭和四)年に定められた「拓殖医補助規定及び拓殖産婆補助規定」を四六年に廃止し、四八年に「開拓医、開拓保健婦及び開拓助産婦規則」を定めて、これらの医療関係者を求める市町村長は知事にその設置を要望できることとした。医学教育の現場では常に医師不足の解消を求めた教育機関の拡充とともに、第二次世界大戦によって情報や技術の向上に後れを取ったその質の確保が課題であった。しかし医師等の不足は深刻で、資料4に示した道衛生部による一九六〇年のへき地診療所設置計画では、無医地区が全道で二一八区の一九万人に及んでいるとし、最寄りの医療機関の利用の可否から無医地区を三区分に分類してい第二節 医療・保健資源の配置280第1部 社会・文化 第5章 保健・福祉・医療
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