に米国から不活性のソークワクチンを輸入して、日本で初めての集団予防接種がこの時北海道で実施された。一九五五年、原水爆禁止世界大会が広島で開催され、その翌年に日本原水爆被害者団体協議会が結成され、北海道にも原水爆被害者団体協議会(現在の被爆者協会)が六〇年に結成された。部附属病院の浜田克裕医師の報告書である。この年の被爆者手帳所持者は全道で四六五名であるが、受診率は四一・五%と低く、その理由として健診場所が遠方であること、被爆者本人の特別健診に対する認識度の低さ、また既往歴を隠そうとする意向も指摘し、彼らを正しく啓蒙する必要性を記している。北海道在住の被爆者は被爆地で被害にあった復員者や当該地からの転入者などであるが、被爆地から遠隔の地であるため、道民による被爆者への理解の程度が低く、医療機関の意識の低さも受診者から不満の声として聴かれたという。亜急性脊髄視神経末梢神経障害(SubacuteMyelo-Optico-Neuropathy以下スモン)は異常知覚の伴う身体麻痺に冒される病で、下痢、腹痛などの腹部症状、視神経障害や耐え難い痛みを症状とする疾病である。整腸剤キノホルムの使用に起因する薬害で、北海道においては釧路市及び周辺町村に一九五八年より散発しはじめ、室蘭市及びその周辺にも六六年まで発生した。この間の確定患者数と疑似患者数は四三三名となった。原因が解明され、薬剤が販売禁止となって発症は激減したが、当時もその後も対症療法のみで治療法はない。一九七一年からは、被害者が製薬会社と国に損害賠償を求める全国的な大規模訴訟が起こり、被害者側の勝訴判決が相次いだ。全国初の患者団体の会が資料7は一九六四年から道衛生部によって毎年実施されている「北海道在住特別健康診断」に関する広島大学医学被爆者への医療スモン病と患者団体の活動282第1部 社会・文化 第5章 保健・福祉・医療(3) (2)
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