北海道現代史 資料編3(社会・文化・教育)
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資料14である。その背景には企業規模による労働条件の格差があると指摘し、労災に当たるような死に至った労働ののちに日本語の発音のままオックスフォード英語辞典にも掲載され、国際労働機関からは日本にとっての社会問題であると指摘されるに至った過労死について、北海道過労死問題研究会世話人の川島亮平医師が解説している記事が事例を紹介している。過労死は労働改善の及ばない中小企業や低賃金の場所に生じやすいが、体調不良であっても多忙なために受診や通院控えが発生しやすい。当時議論が始まっていた労働者の健康権も主張しつつ、労働災害に警鐘を鳴らす資料である。日本では高齢化が急速に進み、一九七〇年に高齢化率七%の高齢化社会に、一九九四年には一四%の高齢社会へと突入する。世界が驚く高齢化のスピードであった。全国平均よりも速く高齢化していた北海道では、既に一九七九年度の『道民生活白書』(北海道、一九八〇年)で、高齢化社会の諸問題に対しては、行政だけではなく、関係諸団体や道民自身も高齢化の現状の正しい認識と速やかな対応に迫られていることが明記されていた。一九八〇年代になると寝たきり老人や「ボケ老人」と揶揄されていた認知症高齢者が課題となり、その介護に奔走する介護家族の過度の負担を改善するホームヘルプサービスなどが取り組まれたが、九〇年代になると、本格的に介護の社会化ともいえる制度改革の模索が始まった。資料15は、その結果構築されることになった二〇〇〇年の介護保険制度施行に向けた北海道の日程を示したもので、一九九七年五月に開催された介護保険制度推進連絡協議会の配付資料である。国の施行働き過ぎと過労死介護保険制度の創設第六節 二〇世紀末の医療・福祉課題286第1部 社会・文化 第5章 保健・福祉・医療(2)   (1) 

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