【基礎疾患がなくても死の危険に】過労死がもつ最も大きな問題点は「突然死となって現れるケースが多いため、普段は必ずしも異常が認められないこと」という。川島医師らの過労死問題研究会では長時間過密労働が人体に与える影響の調査、過労死一一〇番での相談業務などを行ってきた。高血圧、糖尿病など基礎的疾患がなくても死にいたる可能性があることは、同医師らの調査でも証明されている。同医師らは夜勤が血圧・脈拍に与える影響について、正常血圧者の日勤日と夜勤日の血圧を計測。仕事中のPRP値は日勤日、夜勤日で差は見られなかったが、入眠中のPRP値は夜勤日が有意に高く「十分な睡眠が取れず、体力の回復が満足にできていないことになる」と話す。高血圧者についても同様の結果。「ただでさえ血圧の高い人が夜勤を行った場合、絶えず大きな負担にさらされている状態になる」という。また、長距離運転者の血圧心拍数の影響に関する調査では、休日の最高血圧は百五十未満が大半だが、深夜労働中は二百五十を超えることもあることが明らかになった。脈拍数、心拍数に関しても休日は正常だが、労働中は著しく上昇。「時間帯によっては死に至ってもおかしくないくらいの高値が記録されています」。さらに、日本産業衛生学会交代勤務委員会が行った調査結果を挙げる。これは男子を対象に深夜交代、日勤などの勤務形態別に肩こり、かぜのなおりにくさなどの自覚症状を調査したもの。「非深夜交代勤務者、三交代までは自覚症状の訴えについて大きな差が認められない。しかし二交代になると、自覚症状を訴える人が急激に多くなる。これを女性、看護婦さんに置き換えると、今回二月九日から実施された国立療養所の看護婦二交代勤務の導入がいかに問題のあるかが分かる」と指摘する。【健康権主張の時代に】疲労による体調不良の患者は多忙なため、自然と医療 なことに、こうした患者さんはたいてい飛び込みで来る機関から足が遠のいていることも問題のひとつ。「残念ため、再来の保()障はありません」。「かぜなどの症状に対ママ326第1部 社会・文化 第5章 保健・福祉・医療
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