北海道現代史 資料編3(社会・文化・教育)
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向でのそれぞれの努力が語りあわれた。この方向をよりいっそう推進するための一案として、各地域間の「人民留学」や「技術移転」のための人の交流という着想が出された。これはなんとかしてやってみたい実験である。人民の経験や知恵や技術の共有化(医療や遊びや芝居その他)である。活動家、工作者移動セミナーのようなものも将来実現したいことのひとつである。日本全体をどうするのか第四は、日本および世界の全体の変革と地域に生きることとの関連の問題である。この問題については、二つの対照的な方向から意見が出た。そのひとつは、自主講座の井上澄夫氏からのもので、大上段からせまる発言であった。根本問題はたたかいの方法論ではない。古典的社会主義像の崩壊を論ぜずには状況に耐えることはできないだろう。金大中氏救出のさきに、三里塚廃港のさきに、反原発のさきに、そのさきになにをみるのか。日本をつくりかえる具体的イメージをどうえがくのか。混迷をのりきる力は全体像の提示にある。その全体像から地域を見かえさないと大波に呑み込まれてしまうという趣旨の切り込みであった。これに対する答えは、おなじ次元では返されなかった。ただ、わたしの意見では、二つの発言がそれとかみあう内容で語られていた。ひとつは前田俊彦さんの三里塚論であった。昨年、青年行動隊が全国行あゃ脚をしたなかで、七尾火発反対の漁民が政府・資本の補償金のエサを拒否するうごきをまなび、成田用水事業へなびきそうな反対同盟の一時の気持の傾きを反省した報告から、前田さんは、人民綱領獲得の萌芽としての自力更生の思想が、七尾と三里塚のあいだで通じあったとのべた。さらにこのことは、パラオ非核憲法制度から独立共和国への歩みのなかで、アメリカの巨額の財政援助を拒否する運動があることと通じているし、さらにいえば、都市サラリーマンが国や銀行から金を借りて家を持つ住宅ローンへの反省にもむすびつく。つまり前田さんは、七尾―三里塚―パラオにおいて、日本の将来像をえがこうとした(特長ある木において森を見る自力更生の気脈を通じるところから― ― ――んぎ388第1部 社会・文化 第6章 社会運動【市民・環境・政治運動】

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