北海道現代史 資料編3(社会・文化・教育)
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の将来に希望が持てなくなるばかりです。稚内市や利尻・礼文など観光地に対するイメージダウンにもなりかねません。これは、道北住民にとって死活問題です。一昨年、科学技術庁が貴職に対して深地層試験施設の立地を申し入れてから、私たちは道経済部の担当者と会ったり、庁内の検討委員会に出席するなどして、住民が抱く不安や疑問をお話してきました。しかし、担当者からはおざなりな説明しかなく、私たちが何度も要請してきた道主催の事前説明会も開催されていません。八月三日からは、住民の声を聞き流すだけで十分な質疑もない「道民のご意見を聴く会」が行なわれています。これでは、道北住民が一六年間抱いてきた、「核のゴミの最終処分地にされるのではないか」「一次産業が風評被害を受けるのではないか」などの疑念が何ら解消されないままに、貴職が立地の是非を判断する結果になってしまいます。この計画は、深地層研究所の立地が誘い水となって、道北地域への処分場の立地につながりかねないものです。私たちは昨年来、貴職が公約に掲げる「道民合意を得る」ための手法として、「幌延町および周辺地域で『住民投票』や『住民アンケート』を実施して、民意を確認してほしい」と、何度も要請しています。しかし経済部担当者からは、住民の立場にたった回答はありませんでした。また私たちは、「聴く会」とは別に、住民の疑問に応える「意見交換会」を、道北で開催することも要請してきました。これに対して、八月三日に幌延町内での話し合いの席上、資源エネルギー課参事より「持ち帰り上司と相談する」との説明がありましたが、未だに回答はなされていません。貴職の部下たちによる一連の行為は、「幌延問題」によって悩み、苦しんできた、道北住民を愚弄するものです。「道民参加の道政」に逆行するこうした事実は、貴職に伝わっているのでしょうか。それとも、部下たちの対応は貴職の指示によるもの、と理解すべきなのでしょうか。405      第5節 核・原子力をめぐる社会運動

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