北海道現代史 資料編3(社会・文化・教育)
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度全国で環境保護の髙まりが盛り上がった時期です。国会では、自然環境保全審議会の林〔(修三自然公園部〕会長が、国立公園の中の道路の在り方として「その道路が社会的にぜひ必要であり、他にこれに代わる適切な手段が見出せないことが前提」とする談話を発表するなど、道道士幌然別湖線を巡る道路の是非が大きな世論となっていきました。これらの社会情勢の中で、昭和四八年、道道士幌然別湖線は未開削部分二・六キロメートル部分の工事が凍結されることになりました。5 しかし、その後、昭和六三年一一月環境影響評価報告書の確定を経て、本格的な未開削部分の道路建設の動きが再び始まりました。当初は、駒止トンネルルートと言われ、駒止湖の近くをトンネルとするルー卜案でした。環境影響評価報告書もこのルートを前提に調査を行い、経済的にもこのルートが最良と判断していました。しかし、このルートも自然環境への影響の懸念が編者注)三 1 大きいとの反対が根強く、平成五年九月には、全線をトンネル化する現在の案が浮上してきました。今年、大雪山国立公園の公園計画変更にあたり、この全線トンネル案を公園利用道路として妥当、とする自然環境保全審議会の答申が環境庁長官に提出されました(但し、まだ公園計画の変更として決定されていません)。自然環境の特異性然別湖周辺は、十分な自然調査が行われていない地域です。北海道全体がそうですが、精密な生物、地質、種の生息地、地下水の調査など不十分なものです。例えば、最近然別湖周辺のガレ場から新種のクモが発見され「マツダタガネオニグモ」と命名され世界に発表されています。また、地形的にも然別湖周辺は永久凍土ではないかとの指摘がされ、その特異な地形とその生息環境に基づく生物の分布の特異さが日本でも極めて特殊414       第1部 社会・文化 第6章 社会運動【市民・環境・政治運動】

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