知的障害者(精神薄弱者)運動ちえ遅れの子は、今のままの日本の社会的環境では、 が子の将来を案ずる真剣な親御さんと共に、どれ程教育個々の親の努力だけでは、充分な教育も受けられず、成人後大部分は、落伍者として、みじめな生活に陥る怖れが多いことです。日常教育相談に与つている私達は、吾施設の不備や適当な職場の見当らないことに嘆息したことでしよう。又、犯罪者の更生保護の事例研究などに於いて、早期に教育し補導したならば、決して犯罪などに陥らなかつたに相違ない例に、どれ程多くぶつかることでしよう。敗戦後、殊に日本は貧困に陥つています。こ北海道精神薄弱児育成会『手をつなぐ親の会会報』一号一九五五年一二月れも事実ですが、併し、その気になれば一挙にとは行かなくとも、年次計画で、精神薄弱に対する行政をもつともつと拡充する方向へ、教育面でも厚生面でも、推進し得る筈です。これには、政治及び行政首脳部の認識不足から改めさせねばなりません。このためには、又、私達が現実の資料を持寄り、事実の裏付けをせねばなりません。この様に社会的に働きかけるためにも、すべての親が、手をつなぐことが大切です。北海道育成会は、出来上つたばかりですが、これは、一方に於いて大きな社会運動の地盤にもなりましようし、他方に於いては、不幸な事実に思い悩むお互い同志の慰め合いの場ともなりましよう。事実を事実として受取つたとしても、さてその事実問題を最もよく解決することは、個々の人の力の限界を越えています。私達は、冷静な態度で、従つて変な見栄や体裁に捉われないで事実にぶつかり、問題を曝け出しましよう。そうして精神薄弱に対する現在の不備を、一歩づつでも補正して行くように努めましよう。これは、大第二節 入所施設設置運動〔論説 事実を事実として 理事 奥田三郎〕36 第2節 入所施設設置運動429
元のページ ../index.html#445