2 十勝沖地震二周年の日に当つて 十勝支庁長 (北海道立図書館所蔵)佐々木茂一 遺体の引き取りに来訪された遣族には数々の哀しい話が秘められていた。思いもよらぬ台風で最愛の妻と子を同時に失った夫、転任の途上一家が遭難し、ただひとり残された老いた母、母に代って育ててくれた老父を失った兄と妹、ただひとりの母を失った学生、三年前別れてこんど遺体となった息子に対面する叔父とその妹、職員では終戦時の空襲で連絡船乗り組み機関長の夫を失い、こんどは第十一青函丸に乗り組んだばかりの長男を失い、二度も同じ不幸に遭った母とその妹など悲話は数限りなく、側でそれぞれの嘆きを聞くのも耐え難い悲しさであった。洞爺丸台風による遺体収容〈一九五四年九月〉一九五四年洞爺丸台風青函船舶鉄道管理局『洞爺丸台風海難誌』一九六五年〔5遺体収容記奥山春蔵(当時 七重浜職員養成所長)〕492第1部 社会・文化 第7章 自然災害と防災(2)
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