北海道現代史 資料編3(社会・文化・教育)
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の水島きみゑさんが応援に来てくれた。両女性にとってこの困難な仕事をどういうふうにやりとうせるか、いささか不安もあったが案に相違して物の見事に、しかも手さばきもあざやかに、最後までやりとげてくれた。所内は初めから重苦しい空気が充満し、目に映るものがことごとく悲惨な姿ばかりで何ひとつ心の安らぎを覚えるような事のない安置所のなかで、白衣をつけかいがいしく清拭する姿に対しては感激と喜びの声がそのつどきかれるようになった。「ああよかった」と仏に対する最後の世話でこの柔和な温かみのある両女性によってなされたことは遺族にとってせめてもの慰めとなったに違いない。既に日が経って相当に傷んでいる遺体の世話は尋常一様ではできかねた、心の底から湧き出てくる深い愛の力がなければできない筈である。遺族を慰めわれわれを助けてくれた両女性に永遠に幸あれと祈らずにはいられない。(北海道立図書館所蔵)494第1部 社会・文化 第7章 自然災害と防災

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