4 町財政への冷害の影響動は逐次道民の間に侵透し、各地域住民の協力による事犯防止の事例も見られ、「実祖母、実母、実兄の共謀で十七歳の娘を十万円で身売させんとした事件を未然に防止したケース」や「接客婦をしていた児童(十七歳)を関係者の深い理解と同情と熱意により結婚にみちびいた事例」等各地に見られた。また、檜山瀬棚町における「出かせぎ労務者保護組合」のように自主的民間組織の設置を見たところもある。なお、道では人身売買の未然防止対策の一環として、道内の各職業安定所を通じ、この地域で就職を必要とする子女の実態を把握し、正しい職業へのあつ旋の強化を図つたが、十一月中旬、冷害地救援の一助にと東京都美容師連合会より美容師見習の求人がもたらせられたほか、 道外から多数の求人申込があつたので、各地域における就職希望職種と就職後の安定性を勘案して、十二月二十日東京へ美容師見習二十一名、静岡県に観光旅館の季節女中十三名の集団赴任の措置を行つた。これらの就職後の状況は良好で、その後三十二年三月新卒業者に対する道外求人が激増し、道外就職者は六百二十三名に達した。なお、静岡県へ赴任した季節女中は、半年間の稼働を終えて三十二年六月全員無事帰郷したほか、東京都へ就職した美容師見習も概ね良好に定着している。四十年来初の大凶作と加えて本町の累積した財政難とは町行政の前途に全く光明を失いこのまゝ推移すれば機能停止の最悪事態にまで陥る情勢となつたので過般来町理事者と議会は切抜け対策に種々協議を行つた結果、二十五日の議員協議会に於て其の大綱の方針を定めると共に二十九日臨時町議会を招集して被災農家の町税減免を町財政に背水の陣布かる冷害に対処する非常政策を打出す『上富良野新聞』一九五六年一一月一日(北海道立図書館所蔵)497第2節 冷害とその影響
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