まで残ることになる。人が居なければ、新規の信者開拓が使命となるキリスト教や新宗教はやっていけず、地方から撤退する。では、人口が拡大し続け、一九〇万都市となった札幌では諸宗教が布教の機会を生かして教勢を拡大し続けているかと言えば、そうとも言えず、百年以上の伝統を誇るキリスト教会も信徒の高齢化と減少に悩み、神社は崇敬者、寺院は熱心な檀家を減らし、多死社会の恩恵として檀家の規模のみ拡大させている。そうした中で人々の孤立が社会問題化してきた。宗教人はひとたび社会からこぼれ落ちた人々を包摂する。社会から一時隔離された矯正施設で暮らす人々に対する教誨活動も明治以来、宗教界が担ってきており、篤志面接員として活動する信仰者も少なくない。教誨とは、刑務所・拘置所・少年院等の矯正施設において宗教者が被収容者に徳性を涵養し、更生を働きかけるカウンセリングであり、無償で行われている。一九五六(昭和三一)年「全国教誨師連盟」が設立され、北海道内の宗教者が矯正施設や自治体と協力しながら研修を行ってきた資料を掲載している(資料10①、②)。研修会参加者名簿(一九七五年)から教誨師の出身教団を分類すると、神社本庁五名、天台宗一名、真言宗六名、浄土真宗諸派三七名、浄土宗五名、曹洞宗一一名、臨済宗一名、日蓮宗七名、法華宗一名、天理教九名、金光教三名、黒住教一名、カトリック三名、プロテスタント七名、救世軍一名である。北海道の宗教界における教勢を反映しているが、明治初期から教誨活動に取り組んできた浄土真宗の層が厚い。し、教会員たちを中心に市内からボランティアが集まり、二四時間体制の傾聴ボランティアに従事していた。いのちの電話では、相談員が約二年間の研修や実地訓練を経て一人で電話を受けられるようになる。行政相談とは異なり、相談員は継続的な関わりや具体的なアドバイスは行わない。再び、同じ人が電話をかけても回線が空いているとは限資料11は、北海道におけるいのちの電話が創設された経緯を記録する記事である。札幌教会が中心的な役割を果た535解 説
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