弘前市と斜里町が、今春、友好都市盟約を結んだのは、戦後になってこの悲劇を知った斜里町民が、藩士を〝斜里発展の礎〟として顕彰し、慰霊碑を建てて手厚く弔っているのを弘前市が伝え聞いたのがきっかけだ。 「斜里町の恩義にむくいよう」と、弘前市が披露するねぷたは、三百年の歴史を持ち、文化庁の重要無形民俗文化財にも指定されている一大行事。今回は、弘前の大工さんら五人の製作班が材料持参で十一日に斜里町入り。役場裏の広場で作業を続け、この日、ようやく高さ五メートルの本ねぷたと、同じく一・八メートルのかつぎねぷたが完成した。ねぷたは、おはやしなどの民俗芸能を伝承する弘前市民ら三百人が中心になって引き、津軽藩士殉難慰霊祭の十六日を中日に、三日とも、午後七時半から同町市街の目抜き通りを行進する。同町商工会婦人部のメンバーが弘前市の製作班の指導を受けて作ったちょうちん型の「金魚ねぷた」を持った斜里町民も行列に参加、冷夏の夜に熱い交流を繰り広げる。この三日間はちょうど同町の「しれとこ夏祭り」に当 たり、十七日には、定置網の街らしく、網の土台に使う土俵を昔ながらの素手で運ぶ「名物しれとこ土俵かつぎ」競走が行われるほか、同じ日、第二回オホーツクサイクリングの一行千人も同町に到着する予定。道東の町を舞台に、全国に広がる素晴らしい交歓の輪が生まれそうだ。第2節 観光目的のまつりへの批判と新しいまつり597
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