北海道現代史 資料編3(社会・文化・教育)
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この施設をするに及んで、北見地方の四十農協が次々と施設をし年々増加を見て現在では、この北見地方管內だけで、約二万五千戸の農家の内二万戸がこれに加入している。北見地方より稍々遅れて、十勝地方、上川地方、後志、胆振、道南、釧路、空知と普及しつつある。現在北海道で総農家二十五万戸中約七万五千戸が加入している。全国では八万位あるという。(別表一 参照)それでは、何故本道にこの施設が発達普及したかと言えば、簡単に述べると、交通の不便、通信網等の文化施設の未発達ということから救済するということになりそうだ。従つてこの施設の発達するところは、文化が遅れているとも言えるかも知れない。内地であれば、一村を歩くとしても二時間か三時間で終るのに、北海道では、一日乃至二日間かかる。甚しいのは一週間もかからなければ一人で全戸を廻ることは困難であるところすらある。組合まで十里も離れている農三〈略〉家も多数ある。この広大な土地に二町から五町も離れて散在する農家の人々のための交通機関や通信機関はおいそれと発達するものではなく、望んでもムリと言えよう。その上無電化農家が全体の四十パーセントである。これらの無電農家がラジオをきくには、バツテリーか電池が必要だ。このための時間的、経済的な空費は甚しいもの二 がある。従つて、どの農家も個人でラジオを聴く施設をすることは到底出来るものではない。有線放送施設は電線を伸ばすだけでこんな心配をしなくても聴けるのである。このラジオを共同で聴取するための施設費は、昭和二十四年五年当時で一戸平均二千円から四千円位であつた。現在では四千円から六千円位はかかるであろう。毎日の農作業を終つて帰る農民達は、暗い石油ランプの下で楽しみと言えば、スピーカーから流れるラジオである。この唯一の慰安施設でもあり、教養施設でもあるラジオを割合安価な経費で、然も一旦施設すれば、時々電柱、電線の補修をするだけで、親機である本機がスイツチを入613    第1節 農村における有線放送

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