北海道現代史 資料編3(社会・文化・教育)
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せっけんにこだわりはじめると、〝北海道〟がよく見えてきます。水の流れにそって、油の流れにそって、人と人とのつながりにそって、〝もうひとつの北海道地図〟がつくられていきます。いままで見えなかった地域の脈流が、少しずつ見えてくるのです。〝一石三鳥〟廃油リサイクルせっけんは、獣脂や米ぬか油、ヤシ油などの動植物油脂、つまり「食べられる油」からつくられます。これらの油に苛性ソーダ水溶液を加え、加熱すると、化学反応が起こり、せっけんができるのです。家庭や料理店で使い古した天ぷら油なども、せっけんの原料として利用することができます。北海道でも、旭川の篠原せっけんや、小樽の南油脂では、地域から大量に出るこうした廃油を原料に、上質なせっけんをつくっています。法律では、業務に用いた廃油は「焼却もしくは再利用〈中略〉せっけんに生かそう北海道の油しなければならない」ことになっており、その責任は、市町村自治体が負っています。しかし、道内には焼却施設のない市町村がまだまだ多いのが現状です。廃油を下水道などに捨てることは禁物です。排水管などに油がたまって付着し、つまる原因になるばかりでなく、下水道の終末処理場の処理能力機能の低下にも結びつくからです。ある調査によると、一般家庭の二三%が、使い古しの食用油を台所の排水口に捨てているそうです。おそらく、実際には、こうした家庭はもっと多いのではないでしょうか。横浜市の消費者団体の行なった調査によると、家庭から出る廃油の量は、一世帯一カ月当たり平均八四〇㏄とされています。旭川市の調査では、その半分以下で、三六〇㏄。となっていますが、それでも旭川全体では一カ月当たり四〇tになります。そのほかに、業務廃油が毎月七〇tずつ出ると言われており、両方をたすと、旭川市だけで毎月一一〇tもの廃油が出ていることになりま638       第1部 社会・文化 第10章 地域からの情報発信

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