北海道がわが国土における唯一の開発希望地として、その国家的使命をになうためには、何よりもまず、居住地として快適であり、かつ、産業高度化に適応する生活環境でなければなりません。しかるに、これまで道民のおかれた生活や職場環境は、他の府県に比較してはるかに劣悪な条件下にあつたことは争われない事実であります。ことに、生活の容器ともいうべき住宅建築の質的貧困さ、なかんずく「寒さ」に十数万戸以上の住宅不足北海道建築部住宅課『住宅年報 4』一九五五年1945~5対する無防備が、いかに道民の産業経済、保健衛生、その他あらゆる生活文化の上に悪影響を与えているかは、しばしば指摘されてきたところであります。しかも、本道の当面する住宅不足は、いまなお、一〇数万戸を数える上に、こんご開発人口の急激な増加によつてあらたな住宅需要が差し迫つているのであります。おもうに、国民経済の復興と人口問題の解決に寄与すべき北海道の総合開発は、生活の安定と文化の向上とによつて、盛りあがる道民全体の積極的な協力がなければ達成できないのでありまして、そのためには、量質ともに深刻な現下の住宅問題の解決こそ、緊急にして不可欠の基本的要件といわなければなりません。ここにおいて、よりよい北海道としての将来の姿を展 序 の住宅事情を正しく理解し、その対策のあり方を深く検望し、力強く建設の歩みを進めるにあたり、まず、現下討する必要があります。この住宅年報は、そのような意味において、戦後から現在までの本道の住宅事情と対策の概要を述べたもので第二節 敗戦後一〇年の住宅政策北海道総合計画における住宅対策695第2節 敗戦後10年の住宅政策(1) 11
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