統合したのも、財政の圧迫が直接の原因であって、かりそめにも住宅対策を軽視するつもりは毛頭なく、むしろ統合によって仕事の合理化をはかり、業務を一段と積極化して、できるだけ住宅対策を拡充しようとの趣旨に出たものであります。このような体制のもとに、いわば地方行政の非常時においてわたくしが今後行わんとする住宅対策について、所信の一端を述べて見たいと思います。一、北海道総合開発と住宅対策二、住宅は生活向上の基盤である住宅が、労働力再生産の場であることは論をまたないが、北海道はその気候的特性から特にその意義が大きい。住民の大部分は、本州そのままの住宅に、多量の燃料を焚きながら、しかも寒さにふるえて暮している。すなわち、生計支出において、全国指数を一〇〇とすると、炭熱費は一八八、住宅費は一四〇、被服費は一二〇、食料費は一一六となっており、寒地生活の負担過重に苦しんでいるのみならず、生理的にも労働の生産性を低下さし〈中略〉ている。いま端的にいって、これらの住宅を防寒化するならば、燃料費を年間一万円以上も節約し、且つ、労働力を向上することができるのである。わたくしたちは、おそまきながら全道七〇万の住宅の防寒化をめざして努力し、住民生活の向上をはかろうとしている。このため、先年北海道防寒住宅建設等促進法が制定された。しかし、この理想達成には、経済的にも、技術的にも幾多の困難が横たわっており、決して容易に解決されるものとは考えていない。三、住宅の建設と維持改善の二面住宅の絶対的な不足に対しては、どうしても活溌な建 設が行われなければならない。しかし現下の国及び地方の財政ならびに個人経済においては、建設には限度がある。住民生活の向上を考えるならば、決してあきらめるわけにはゆかないが、努力してもなお、年間三万乃至三、五万戸程度が限度であろう。これにひきかえ、住宅需要の方は年間約二万戸づつ加わり、また年々一万戸近い既存住宅の減耗を見込まねばならない。従って前述の如く、697第2節 敗戦後10年の住宅政策
元のページ ../index.html#713