北海道現代史 資料編3(社会・文化・教育)
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目的は、道民が木の良さを再認識できる仕組みを構築するという啓蒙精神に貫かれている。空知支庁管内に残る昭和三〇年代初頭までに建築された木造建築の残存状況を調査した上で、①建設廃棄物と処埋される木材の廃棄物量を削減しながら木材のリユース・リサイクルを促進すること、②木材の良さ・大切さを再認識しながら古材の再利用をとおして木材の需要拡大に対する意識を向上させること、③古材の再利用を促進するために提供者と供給者をつなぐ情報ネットワークを確立し、新たな流通システムを構築して産業の活性化を計ること、を目指している。同時に、歴史的建造物の保存再生も視野に入れ、積雪寒冷地において再利用するときに求められる耐震性能や気密・断熱性能確保についても検討を行う。保存再生の展望空知支庁では旧道立滝川畜産試験場機械庫(旧農商務省滝川種羊場機械庫、大正一〇年/一九二一)が道有財産の民間活用第一号として移築再生されている。また、〈中略〉北海道は近代化遺産(一六施設)等を対象とした道建設資材リユースシステムの施行も検討している。開拓以来、炭坑と農業で栄えてきた空知地域は炭坑施設が注目されてきたが、木造建築の恣皆調査を進めるにつれ、茅葺農家が予想以上に残っており、昭和四七年(一九七二)にまとめられた民家調査を補完することができることもわかってきた。空知郡栗沢町砺波地区の宮森家住宅は、富山県砺波市からの入植者の住宅で、明治三五年(一九〇二)の建築である。一部は砺波から移築したものと伝えられるが、広間部分の「枠内(ワクノウチ)」と呼ばれる梁組は砺波地方の民家のものであり、入植者の故郷の民家形式と北海道の民家形式の関係性は、大工の出身地を含めて今後の民家研究の視点になるであろう。(北海道立図書館所蔵)711第5節 北方型住宅への展開  

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