北海道現代史 資料編3(社会・文化・教育)
773/1232

編輯後記 「異徒」第一号が発刊されるまでにほぼ一年の準備期間が費された。だが、ことはそれに止まらない。北大国文学料の卒業生を中心とした同人十七名の年齢の幅は、真に十年に垂んとしている。その十年にわたる雑誌刊行への夢が、今鬱勃たる形となって「異徒」に結集したのである。その気の逸りが稚気愛すべき「異徒」の名になった。同人にはこの雑誌を評論誌にしたいとの志向があった。それまでの数多くの平板な「研究」に物足りなさを感じたからだと思う。しかし、評論とは何か。研究とは何か。誰れもその問いに明確な答えを用意してはいなかった。異徒の会『異徒』一号一九八〇年五月同人間の意志の不統一が、端なくも第一号に掲載された四篇の中に窺われる。この四篇を誰れが統一的に評論と呼び、研究と断じ得ようか。「異徒」は矛盾を含みつつ出発したのである。しかしながら、言い古されたことだが、評論であれ、研究であれ、その方法に搦手があるわけではない。各自が己れのよしとする方法で以て真摯に文学に立ち向かうより道はないだろう。「異徒」とは、文学に対する内なる姿勢であっても、独善を指向するものではない。同人は肚に銘ずべきである。個性を生かしつつも読手に十分理解されうる文章で以って論理を展開すること、これが今回の編輯に携わった四人の編輯方針であった。編輯部の批判に従うもよし、拒否するもよし、最終的な責任は執筆者が負うべきである、との取り決めであったが、全員書き改め、現在の形となった。初稿より数段の出来とは思うが、固より編集者の能力に余る領域である。これが初めての論文である執筆者も多く、大方の心ある叱正をお願いする次第である。   (越野 格)第三節 様々な意匠それぞれの方法第3節 様々な意匠75718 

元のページ  ../index.html#773

このブックを見る