い何が問題で自由化され、どんな結果が生まれているのか、教育上の見地から探ってみよう。開成高(笠岡正次校長・生徒千四百人)で服装が自由になったのは七月の一学期終了日から。同校では生徒心得で「服装は制服」と決められていたが、生徒会が〝自由化〟を決議したため、学校側は急きょ職員会議で自由化の方針を決めて生徒に発表、混乱を未然に防いだ。また父母にはプリントを配って了解を求めたものの「実はきついおしかりを受けましてね。今でも納得してもらえた、とは思っていません」(笠岡校長)と述懐している。北星男子高(石突征校長・生徒九百人)の場合は七月に生徒会がアンケート調査をもとに自由化を決議、学校側に要求した。職員会議では初め反対意見が強く、慎重論が大勢を占めたが、生徒間に「学校側は引き延ばし作戦で握りつぶしを図っているのでは…」という不信感を生み「この上は生徒の意思を尊重するほか道はない」(石突校長)と、九月二十一日から実施に移した。同校でもやはり混乱回避のため、方針決定後ではあったが、PTS(父母、教師、生徒)懇談会を開いて、三者の意見交換を行なっている。両校とも大まかにいえば、生徒の八割が自由化に賛成、父母の方は逆に八割が反対と、考え方には大きな断層がある。まず生徒たちが自由化を望む理由をみると①服装まで縛られたくない、という精神的な解放、個性尊重を求める考え方②制服はほとんどが一着しか持っていないのでクリーニングできず不衛生だ。キチンと着ないのではかえって見苦しい③諸外国には学校の制服などほとんどなく、日本の習慣は時代錯誤だ―などがあげられている。 これに対して父母たちの反対理由は①詰めえりが一番高校生らしく、好感が持てる②自由化してアレコレ着る物を変えていくようになれば金がかかる③社会人との見分けがつかなくなり、非行化の原因になる―などがおもな意見。一方、教師たちは「制服以外の通学服などこれまで考えてみたこともなかったので、決定までは大いに迷った。第2部 教育 第5章 高等学校936
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