〈中略〉北海道における特殊児童実態調査(第一報告)精神薄弱児の実態一 本調査の趣旨精神薄弱児に対する教育的関心は、最近特に上昇して来ているが、その教育的対策を樹立するに当つては、その実態を正確に把握することが先決問題である。わが国では、昭和二八年にはじめて文部省によつて全国的な規模の調査が行われたが、この調査でサンプルに選ばれた府県は、僅かに大阪府、群馬県、徳島県のみで、しかも各地で用いられた判定の基準は、遺憾ながら不統一のそしりをまぬがれなかつた。したがつて、この結果をもつて、北海道における精神薄弱児の数を推定することは、はなはだ困難な実情であり、さらに広大なへきすう地域と複雑な産業構成をもつ本道の特殊事情を考慮する時は、その困難性は一層増加するのである。そこで本道における精神薄弱児の実態を把握するためには、本道独自の調査が必要であり、しかもそれは精神薄弱児等の就学義務が教育当局により真けんに考慮されつつある現今の情勢よりみて、緊急を要するものであると考えられた。文部省の実態調査結果が発表されるや、いちはやく全国の各府県では、各々独自の調査を実施し、その結果を発表している。道内では精神薄弱者を主目的とした調査は赤平市で行われたものを除いては皆無の状態であり、僅かに二、三の都市で集団知能検査の結果を判定の基準とした調査が行われているに過ぎない。北海道特殊児童実態調査委員会で計画した今回の調査では、各地で実施された諸調査の不備を補いつつ、完全なサンプル計画と、統一された判定方法のもとに調査を進めたが、この結果については次の各面に利用されることが期待される。特殊教育に対する社会的啓蒙をはかる。特殊教育行政、児童福祉行政の立案、運営のための資料を提供する。(2) (1) 971 ── 第1節 戦後特殊教育の黎明
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